ブックレビュー:アルファ・ケンタウリからの客

2022年10月11日

この小説は先日まで公演されていたミュージカル『シャボン玉とんだ、宇宙までとんだ』の原作です。
残念ながら私はチケットが取れず観に行けませんでしたが、原作だけでもと思って電子書籍を買って読んでみました。

高度成長期の日本を舞台にした作品で、1970年大阪万博近くで12歳の佳代がスリに失敗し養父母から折檻されショック死する場面から始まります。

出だしから重い展開だし、宇宙やラス星人についての説明もなんだかよく分からないし、生々しい表現もあって読んでて少し辛くなるような部分もあったりで、最初は最後まで読めるか心配でしたが、そこに悠介やラス星人たちが絡んでくると俄然話が面白くなってきて一気に読んでしまいました。

ストーリーの大まかな流れとしては単純明快なハッピーエンド。
なんだけど、ヒロイン佳代の半生はラス星人のミラが「不幸なカヨ」と言っているだけあって、これでもかというくらい不幸です。
悠介はとても賢く、なんでもそつなくこなしてしまうような人だけど、控えめで優しい好青年として描かれています。
そこから、ラス星人たちを使って結構都合よく話が進んでいき、所々ツッコミを入れたくなるような場面も無きにしもあらず(笑)
途中、宇宙に関する説明でなにやら難しい数式とか出てきて「なんじゃこりゃ?」ってなっちゃいました(^_^;)
あと、ラス星人たちの「チキュウのニンゲンたちが使う道具」の表現の仕方が面白い。自動車も難しい言葉を組み合わせて表現されています(笑)

私はミュージカル作品をまだ観ていないのですが、公式サイトに掲載されているあらすじや観劇された方々の感想を見る限りでは、時代背景や設定を変えて子どもが観ても大丈夫な作品になっているのかなと思いました。
観劇感想を読ませていただいていた中で佳代が悠介のことを「ゆうあんちゃん」と呼んでいるのを「ゆうあん・ちゃん」と思っていた方も多いみたいですね。
大阪弁で「お兄ちゃん」を「あんちゃん」と言うので、漢字にすると「悠兄ちゃん」になるのかなと思います。

この小説はジェットコースターみたいなストーリー展開でテンポもよく、所々ツッコミどころもありつつ、全体的には面白かったです。
いつかミュージカルのほうも観てみたいですね(^^)