『ピアフ』大千秋楽@森ノ宮ピロティホール 観劇感想

2022年10月11日

『ピアフ』の大千秋楽に行ってきました。

今回は2回目ということで、前よりも細かいところまで見ることができて、話の流れも理解できた気がします。

出演者の皆さん、シアタークリエで観た時よりパワーアップしていて、もう何と言って良いか…本当に素晴らしかったです!

大竹しのぶさん演じるピアフは、まるでエディット・ピアフ本人がそこにいるかのようで何度見ても圧倒されてしまいます。といってもまだ2回しか観てませんが(笑)

結構下品なセリフも多いのですが、大竹さんが言うと嫌らしい感じもほとんどなく、逆にチャーミングにさえ感じます。

そして何よりピアフの10代から演じているのですが、違和感がないのがすごい!さらに晩年アルコールや薬物中毒になったピアフの細かい描写と歌うことに対する強い執着心。孤独感。切なくて、やるせなくて・・・

でも今回、ピアフが最後の夫テオと出会ってからがとても幸せそうに見えたのが救いでした。孤独と闘い続けたピアフですから、せめて最後くらいは幸せであって欲しいと思いますもん。

大竹さんは歌はすごくうまいというわけではないのですが、魂のこもった歌声に圧倒されますね。

ピアフが子どもの頃を過ごした伯母の売春宿にいた娼婦でピアフの生涯の友となるトワーヌを演じる梅沢昌代さんは、大竹さんとも息がピッタリで、本当に親友という言葉がしっくりきます。

軽口叩きながらもピアフのことを気にかけ支えようとしているのが伝わってきて、最後のシーンはもう涙が止まりませんでした。

彩輝なおさんは、スター女優のマレーネ・デートリヒと、ピアフにこき使われる付き人マデレーネの2役。

デートリヒ役ではスターオーラ全開で存在感抜群。そして時に相談役、時に母親のように支える親友として演じています。

付き人マデレーネ役ではとにかく控えめに地味に、ピアフの奔放さに翻弄されながら健気に支える有能な女性を演じていました。

対照的な役作りが見ていて楽しかったです。

宮原浩暢さんは、メインの役であるシャルル・アズナブールを好演。有名歌手になりたくてピアフに近づいたが、いつしか本気で愛するようになり、薬物依存でボロボロになっていくピアフを支えようとするが、彼の才能をつぶしたくないピアフが別れを切り出す。

その場面での、別れがたくピアフにすがりつくシャルルが、そしてピアフの意志の固さを知って去っていく後ろ姿が切なかったです。

他の役でもコミカルな演技からシリアスな演技まで、どの役も丁寧に作り上げられた印象。

シャルルとして歌う場面でも、素敵な歌声を聞かせてくれました。

上遠野太洸さんのメインの役は、ピアフの最後の夫テオ・サラポ。

役としての場面は少ないながら、ピアフへの無償の愛とピアフを温かく包み込み見守る包容力を感じました。

ピアフと一緒に歌う場面で、ピアフを見つめる瞳がとても優しかったです。

川久保拓司さんのメインの役は、ピアフのマネージャーのルイ・バリエ。

戦時中の場面でピアフの前にいきなり自転車で現れて、すごく軽いノリで「戦争が終わったらピアフのマネージャーになる」と宣言し、宣言通りピアフのマネージャーになったルイは、奔放なピアフに翻弄されながらも、薬物依存になり堕ちていくピアフを必死に支え続けます。マネージャーになると宣言した当初は、あそこまで苦労するとは思ってなかっただろうなぁと思いながら見てました。

ルイとしての場面は少ないながらも、最後までピアフのことを思い支え続けるルイの苦労と努力が感じられ、役の背景がしっかり見える演技がとても素晴らしかったです。

大田翔さんのメインの役はイブ・モンタン。イブ役での場面は本当に短いんですが、イブの人柄がよく分かる演技。

そして、カウボーイの真似をしながら歌う時と「ソレントへ」を歌う時のギャップもいいですね(^-^)

他にもいろんな役で、コミカルな演技やシリアスな演技で魅せてくれました。

上原理生さんのメインの役はオランピア劇場のヒゲの支配人として有名だったブルーノ・コカトリ。

ブルーノ役としての場面は少ないんですが、ピアフの行動に翻弄されて頭を抱えつつも、受け入れる懐の深さを感じさせます。

他の役でも存在感バッチリ。そして、どの役もどこか茶目っ気があってかわいい印象。

ところで、ピアフとトワーヌに「イン○」とからかわれていた役は、最初見た時どこかの兵隊さんかと思っていたのですが、ピアフの恋人の一人でアメリカのスター俳優の設定だったのですね。今回やっと理解できました(^_^;)

駿河太郎さんのメインの役は、ピアフ最愛の恋人でボクサーのマルセル・セルダン。

前回観た時には、あまり伝わって来なくて「あれ?」と思ったんですけど、今回はちゃんとマルセルの思いを感じ取ることができました。

マルセルも親から愛情をもらえずに育ち、ピアフの中に自分と共通するものを感じて、お互いに惹かれあったのかなと感じました。

純粋にピアフのことを思う気持ちが伝わってきて、ピアフにとって安らぎになっていたということが納得できる役作りでした。

他の役では、ルイ・ルプレーのゲイの恋人役がなんだかかわいらしくて印象に残ってます(笑)

辻萬長さんのメインの役は、道端で歌を歌っていたエディットを拾って「ピアフ」と名づけ歌手デビューさせるナイトクラブのオーナーのルイ・ルプレー。

ルプレーはゲイでエディットに手を出すこともなく、本当にエディットにとっては父親のような存在だったんでしょうね。それを感じさせる優しいまなざしと包容力を感じました。

そしてルプレーが殺されてしまう直前の場面では、セリフには一切出て来ないものの、何か問題を抱えて苦悩しているような雰囲気で不穏な空気をかもしだします。これがベテランの役者さんの演技かと感嘆した次第です。

万里紗さんはメインの役は特にないようでしたが、セクシーな役からシリアスな役、コミカルな役までいろんな顏を見せてくれて、作品に華を添えています。アンサンブルでいろんな役を魅せてくれるのも素敵ですが、一つの作品の中で通し役も観てみたいなと思いました。

また、この作品では舞台袖でバンド演奏されているのですが、ピアノやアコーディオンはステージ上で演奏され、ちょっとした演技にも参加しています。役者さん以外でバンドの方がお芝居に絡むのは観たことがなかったので、面白いなと思ってみてました。

カーテンコールは3回か4回あった気がします。大竹さんが最後に挨拶をされていたのですが、全然思い出せなくて…すみません。

無事に幕をおろせた安堵感と少しさみしさが入り混じったような大竹さんの表情が印象的でした。

決して明るい内容ではないのですがクセになる作品です。また機会があったらぜひ観たいと思います。