「わが愛の譜 ‐ 滝廉太郎物語」観劇感想

2022年10月15日

今日は、仕事で東京へ行ったので、せっかくだからとチケットを取って「わが愛の譜‐滝廉太郎物語」を観てきました。
朗読劇を見るのは初めてだったので、どんな感じかなぁって興味津々でした。
この作品は、朗読に加えて合間に廉太郎に関係する曲のピアノ演奏と歌が挿入され、それがさらに観客の想像力を掻き立てます。出演者も歌が上手い人ばかり4人揃っているので、聴きごたえ十分!
眼福ならぬ耳福(?)でした\(^o^)/
ただ、作品が全体的に単調なので、途中で寝ちゃう人がいるのも分かる気がする。
滝廉太郎という人に興味があるとか、贔屓の出演者がいるとかクラシックが好きとかじゃないとちょっと辛いかも。

朗読劇って役者さん自身が芝居をする時の癖が結構出やすいんでしょうかね?
他のお芝居とかだと、演出家が役者の動きを細かいところまで指導してることが多くて役者個人の癖が前面に出ることはあまりないですけど、朗読劇はそこまで細かく指導はしてないのかな、と。
逆に私はそれが面白かったですけどね。
こんなこと書くと、どんだけじっくり観察してたんだと思われそうですけど、全然そんなことはなくて私は普通に観てただけですよ。だって、そんなんして一生懸命見てたら疲れるじゃん(笑)
ただ、やっぱり明らかに演出で決められた動き以外のところで、同じような仕草が役に関係なく何度も繰り返し出てきたりすると「この人の癖なんだな」って思いますよね。
こういうところに目が行っちゃうのは、やっぱり職業病かしら??(笑)

この作品は、滝廉太郎が東京音楽学校へ入学した15歳から23歳で亡くなるまでを描いています。
朗読劇なので、舞台にはピアノと椅子だけ。衣装替えもありません。
舞台に立つのは上原理生さん、音花ゆりさん、帆風成海さん、今井清隆さん、そしてピアニストの濱野基行さんの5名。
上原くんが通して滝廉太郎を演じ、音花さん、帆風さん、今井さんがそれぞれ複数の人物を演じ分ける形です。

衣装は、上原くんと今井さんが羽織袴、音花さんと帆風さんは明治時代をイメージしたあでやかな着物姿で髪型もレトロな感じ。正月らしい雰囲気で素敵でしたよ♪

では、またそれぞれの印象を・・・

滝廉太郎役の上原理生くん。
今まで熱い男を演じることが多かった上原くんですが、今回は、ふわ~っと柔らかい空気をまとっていて新鮮でした(^^)
1幕の15~18歳くらいまでの廉太郎が女性を意識し始めたり、年上の女性への淡い恋心、それを友人たちにからかわれて照れたり、むくれたりする場面は母性本能をくすぐるような表現で瑞々しくかわいい印象。
その一方で「音楽が大好きなんだ!」という気持ちがストレートに伝わってきました。これは上原くん自身にも通じるものがあるでしょうね(^^)
2幕は、音楽に情熱を注ぐ廉太郎を熱く演じ、留学先でのドイツ人女性との恋、失恋、病に倒れても音楽だけは続けようとする意志の強さ、最後はかつての恋人や周りの人たちへの思い、志半ばでこの世を去らなければならない悔しさを「別れの歌」「憾(うらみ)」という曲の中で爆発させます。ここはもう、泣いちゃいましたね~

そうそう、どこの場面か忘れましたが、上原くんの立ち位置が私の座席の正面となる場面があり、歌声を真正面から浴びることができました。年明けからなんて素敵なミラクルなんでしょ♪幸せ~❤

上原くんは、前にも書いたと思いますけど、さらにお芝居に対して構えてる感じがなくなって、いい具合に肩の力が抜けてきた印象を受けます。
いろんなジャンルに果敢に挑戦していて、これからまだまだ伸びていきそうな予感。応援したくなっちゃいます☆
あと、密かに上原くんがバリバリのロックを歌ってるところも見てみたいと思ってたりする(笑)
うわ、大幅に話が逸れちゃったヾ(;´▽`A“

廉太郎の母、廉太郎の従兄の妻、幸田露伴の妹・幸、廉太郎のドイツ人の恋人クララの5人を演じた音花ゆりさん。
宝塚の舞台で何度か娘役さんとして活躍しているのを観ています。
娘役らしい仕草など当時の片鱗も垣間見え、特に廉太郎に思いを寄せる幸や恋人のクララが廉太郎と見つめ合うところは、男役さんを見つめる娘役さんの仕草そのまま変わりません。
あのちょっとした目線や仕草が相手役の魅力を引き立てて、2人がステキに見えるんですよね。しばらく宝塚を観に行っていなかったので、懐かしさを感じてしまいました(笑)
お芝居は久しぶりとパンフレットで書かれてましたが、それを感じさせないくらい、多くの役を器用こなしていて、感心しました。
高音がきれいに出ていて安定した歌声。上原くんとのデュエット、帆風さんとのデュエットも素晴らしかったです。

幸の姉・延、幸の同級生のクメ、銀座カフェの女給・美佐子、廉太郎の療養先の旅館の養女・芙美、ドイツ留学先下宿のおかみ、さらに2幕の1場面だけ評論家・姉崎嘲風という男役も演じた帆風さん。
帆風さんも元タカラジェンヌで男役さんでしたね。
今回は大人の女性の役が多かった帆風さん。大人の女性の色気を漂わせ、それでも役それぞれに微妙な変化をつけて同じ人物になってしまわないよう工夫されているのが素晴らしいです。
ナレーション的役割の部分も多かったかな。情景を朗読するところも、なかなか上手で情景が頭の中に広がり想像の翼を広げていくことができました。
裏声を使って歌うのはかなり久しぶりとにパンフレットに書かれていましたが、きれいに出ていましたよ(^^)

土井晩翠、廉太郎の従兄、廉太郎の友人の鈴木毅一と佐久間資夫、幸田露伴、音楽学校の教授の小山作之助とケーベル、廉太郎の父・吉宏の8役をこなしていた今井さん。すごい!!
朗読劇で台本を読みながらできるとはいえ、8役なんて混乱しちゃいそう。
友人役で廉太郎をからかったり、教授役や露伴役で廉太郎にかまをかけたりする場面は、本当に楽しそうでしたし、ベテランの余裕を感じました。さすがですねぇ!
18歳の廉太郎の友人役で「俺たち18歳だしな」だったかな?そのセリフが出た時は、会場から笑いが。
耳で聞いてるだけなら違和感を感じないんだろうけど、やっぱり目の前に貫録十分な今井さんが立ってて「俺たち18歳~とか言ってるの聞くとね~(*´艸`*)
もしかして今井さんあえて18歳じゃない感を出したのかしら?(笑)
今井さんの歌は最初から何も言うことないですよ。
時にしっとりと時に勇ましく貫禄のある歌声ステキでしたぁ(*^-^*)

滝廉太郎の曲は「荒城の月」と「箱根八里」以外は知らなかったんですけど、日本の心を宿し、情景が目に浮かぶようなメロディで素晴らしい曲ばかり。
滝廉太郎のことは学校の音楽の授業でちょこっと習った程度で名前くらいしか覚えてなかったんですが、こんな素晴らしい作曲家が日本にいたんだなぁって、感慨深く歌を聞いていました。

なんだか2公演だけじゃもったいないなぁ。作品としてもまだまだ伸びしろがありそうだし、また観たいです。